バイブレーションに捧げる
自覚とは。
俯いてさ 今にも床につきそうな長い髪の毛なんてさ そこに置いていけよ。
窓越しに見えた猫に中指なんか立ててないでさ
いくつもの光が集まった時刻を見上げてから腕時計なんか見ないでさ
濃いめのスープが映す天井もあっという間に白くしてやる
暗い夜道は歩いても走ってもこわいのサ
裏起毛の表のポケットに財布入ってるから取ってよ。
通知に一喜一憂する午後19時26分
換気扇
目を閉じた時に現れる絡まった自我
いつも空の水色に助けられてばかり
色とりどりの自分を着て口から煙を吐いて
臆することなく道を歩いて
立ち止まったら内側を覗いて
噛んで柔らかくした心に花添えて
何かじゃなく自分に目を向けて
たまった灰は落として
黒ずんだ吸い殻は昨日捨てた
凪
雨粒が僕らを祝福するかのように
意志を持って落ちてくる
透明な傘じゃどんなに広げたって
防ぎきれやしないから
すれ違う人の声がサイレンのように響く
足を止めても足元はどうにも心許なくて
横浜から乗る各駅停車には渋谷でお別れ
少し大きめの歩幅でゆっくり帰ろう
光はいつも眩しいし温かいけど
たまに鋭く身体に突き刺さってくる
心の闇を守るために光ってなきゃ駄目なんだ
雑踏に身を隠すようにね
明日は靄だけど今日も無事に視界を手にしたのなら
たまには鳥肌がたつくらい自分に期待したい
無題
鏡の中の自分は既に成功を手にしていた
数多の大勢
サムネイルは凍ったファスナーの大食い動画
ワクワクは包み込むことによって生まれる
イルミネーションの醍醐味は沢山の黒
放課後の教室の隅の3ヶ月前の学級新聞
6番線の
北風にさらされて小刻みに踊る葉に感化されて足元をおぼつかせる夜
流される人たちは斜め下の自分とのにらめっこに忙しそう
窓の外では新しい終わりが始まったというのに
世界が無数にある今じゃ一つ消えたところで
昔は星空がふたつあったらしい
それを良しとしないので今は口元から火がきえた
色んなものに折り合いをつけてできたシワはどんなアイロンでものばせない
「誰でもない自分が凄いことを認めた上で話を進めてください
いちばんに心から褒めてくれるのは自分だから」
朝の大渦に飛び込んでいったあいつはもう戻ってこなかった
温かいコーヒー/小銭入れ